―――日本選手権神奈川予選・最終7回戦。

 6ラウンドという決して短くは無い戦いを乗り越え、あと一勝で広島への切符を手にせんとする2人のプレイヤーがそこに居た。お互い一度土を踏んでいる。握手は出来ない。己を信じて、戦うのみ。

 
―――須藤恵理香(北海道)。神奈川県・東京都を又にかけ開催される草の根トーナメント“PWC”ことPlains Walker’s Cupの常連である。毎日のように受信される…所謂“電波”から忠実にオリジナルデッキを創作する彼女の姿は(残念なことに対戦成績はいま一つのようだが)誰よりもマジックを楽しんでいるように見える。

 今日のデッキは本人曰く“ビッグバーン”なるあまり耳にしないアーキタイプ。《肥沃な大地》や《不屈の自然》等のマナ加速から《雲打ち》や《若き群れのドラゴン》等のビッグスペルを連打する、いわゆる“ビッグマナ”と呼ばれる形かと思いきや、そこには禍々しいまでのオーラを放つ 《復讐の亜神)》4。このマナ拘束。出るのか、出ないのかなど関係無い。殴り殺すのみだ、と言わんばかりの強い意志の前に、呼吸が止まる。

―――真貝さら(山梨)。2008年グランプリ静岡Round11、トッププロである浅原晃氏を相手に堂々たる戦いを演じてみせた姿を覚えている読者はいるだろうか?彼女も同じくPWCを中心に日々マジックに向き合う一人だ。昨年の日本選手権直前予選では、勝てば本選出場というところで“2008年日本選手権ベスト8”仙波恒太郎氏に敗れ、惜しくもそのチャンスを逃している。今日は、その昨年の雪辱を晴らすべく勝ち上がってきた。残すは昨年と同様、あと一勝。

 彼女のデッキは青白緑ヒバリ“ユグドラシル”。すっかり認知された感のあるこのデッキは《熟考漂い》、《目覚ましヒバリ》そして《ミストメドウの魔女)》。これらのクリーチャーが生み出すシナジー、そしてアドバンテージで相手を圧倒する。

 須藤の膂力なのか、真貝がそれをいなすのか。様々な思いを乗せ、今最終戦の幕が上がる。

Game 1

 ダイスロールに勝利したのは須藤。《肥沃な大地》《台所の嫌がらせ屋》《雲打ち》《原初の命令》《復讐の亜神》に土地が2枚というハンドをキープ。一方の真貝はマリガンを選択した後、6枚のハンドをキープする。

 須藤の《台所の嫌がらせ屋》を真貝が《誘惑蒔き》で奪えば、すかさず《雲打ち》想起で須藤が応える。一方の真貝も《熟考漂い》想起で手札を補充し、両者一歩も譲らない序盤戦だ。

 最初のターニングポイントとなったのは先手6t目。前のターンに真貝が《目覚ましヒバリ》を通常プレイしたのに対し、須藤は少考の後《台所の嫌がらせ屋》1体で攻撃宣言。これを真貝は《ヒバリ》でブロック。当然墓地から《誘惑撒き》《熟考漂い》の2体が戻ってくるのだが、《台所の嫌がらせ屋》が頑強で場に戻るより先に《誘惑蒔き》が場に出るためコントロールを奪うことは出来ない。こうして《目覚ましヒバリ》によるアドバンテージを最小限に抑えた須藤は戦闘後に《原初の命令》で真貝の土地を戻しつつライブラリーから《復讐の亜神》予告。ターンエンドを宣言する。

 返す真貝の手札は《神の怒り》2枚に《台所の嫌がらせ屋》《霊魂放逐》というもの。須藤の《復讐の亜神)》を《霊魂放逐》で捌きつつ《熟考漂い》《誘惑蒔き》で攻撃を継続し須藤のライフを削って行く。しかし須藤のハンドには初手から隠されていた2枚目の《復讐の亜神》!思わぬダメージを受けてしまい、互いのライフは須藤が7に対し真貝は8。

 2体の《亜神》を前に《神の怒り》で一度盤面をリセットすることを選択した真貝。《台所の嫌がらせ屋》をキャストし2点のライフを得てターンを返す。

 しかし、そんな2点のライフゲインなどは関係無かった。須藤のライブラリトップに眠る3枚目の《亜神》が一瞬にしてゲームを終えてしまうのだった。

須藤 1 - 0 真貝

■両者のサイドボーディング■

須藤
In:
3《呪詛術士/Anathemancer》
3《蔓延/Infest》
2《くぐつ師の徒党/Puppeteer Clique(SHM)》
Out:
4《台所の嫌がらせ屋/Kitchen Finks(SHM)》
2《復讐に燃えた再誕/Vengeful Rebirth》
1《炎の投げ槍/Flame Javelin(SHM)》
1《終止/Terminate》

真貝
In:
3《天界の粛清/Celestial Purge》
1《エレンドラ谷の大魔導師/Glen Elendra Archmage(EVE)》
2《崇敬の壁/Wall of Reverence》
Out:
2《誘惑蒔き/Sower of Temptation》
1《エルフの幻想家/Elvish Visionary》
1《ミストメドウの魔女/Mistmeadow Witch(SHM)》
1《神の怒り/Wrath of God》
1《台所の嫌がらせ屋/Kitchen Finks(SHM)》


Game2

先手の真貝は7枚の初手をマリガン。

《台所の嫌がらせ屋》
《台所の嫌がらせ屋》
《天界の粛清》
土地3

という6枚のハンドをキープ。

一方の須藤は

《肥沃な大地》
《不屈の自然》
《炎の投げ槍》
《復讐の亜神》
《野生語りのガラク》
土地2枚。

という7枚を力強くキープ。

 須藤が《不屈の自然》《肥沃な大地》とマナを加速する一方、《台所の嫌がらせ屋》から須藤のライフを削りにかかる真貝。先手4t目には2体目の《台所の嫌がらせ屋》をキャストかと思われたがここでのドローが《崇敬の壁》。少考の後《崇敬の壁》をキャストしターンを返す。これは返しのターン、須藤の“4t目《復讐の亜神)》”をケアした上での選択であると思われるが、これが結果論としてではあるが、、、裏目に出てしまう。

 返す須藤のアクションは《野生語りのガラク》。土地をアンタップして忠誠値が4となった《ガラク》を前に真貝はダメージプランの変更を余技なくされる。《ガラク》にアタックし忠誠地を1とした後、2体目の《台所の嫌がらせ屋》をキャストしターンエンド。この時点で真貝のライフは《崇敬の壁》によるものも併せて30に。

 しかし、この《ガラク》+《肥沃な大地》から生まれれる爆発的なマナソースが盤面を須藤の攻勢へと導いてゆく。

《若き群れのドラゴン/Broodmate Dragon》
《復讐の亜神/Demigod of Revenge(SHM)》
《復讐の亜神/Demigod of Revenge(SHM)》
《炎の投げ槍/Flame Javelin(SHM)》

 という濃厚なハンドから《若き群れのドラゴン》をキャストする須藤。2体の《台所の嫌がらせ屋》を迎え撃つ準備は万全だ。

 これに対しする真貝は《誘惑蒔き》をキャスト。一体のドラゴンを誘惑した後、2体の《台所の嫌がらせ屋》で果敢に《ガラク》を仕留めにかかるが、、、ここで須藤の《炎の投げ槍》が《誘惑蒔き》に突き刺さる!そう、須藤は《若き群れのドラゴン》をキャストしても尚3マナを立ててターンを返していたのだ。こうして2体の《台所の嫌がらせ屋》を迎撃されてしまった真貝は《崇敬の壁》によりライフを36としてターンを返す。

 形勢は完全に逆転してしまった。真貝は須藤のキャストする《復讐の亜神》に対し、《崇敬の壁》によるライフゲインで時間を稼ぎ、《熟考漂い》想起で解決策を模索する。一体の《復讐の亜神》は《天界の粛清》で対処したものの、2体目の《復讐の亜神》とドラゴン達によるフルアタックにより33あった真貝のライフは一挙に20まで削られてしまった。

 しかし真貝の目は死んでない。須藤のハンドが空であることを確認した後、2体の《台所の嫌がらせ屋》でガラクを討ち取ってみせる。そして第二メインフェイズ。《目覚ましヒバリ》を力強く想起する。

《熟考漂い/Mulldrifter》
《誘惑蒔き/Sower of Temptation》
《崇敬の壁/Wall of Reverence》

という3枚の選択肢から

《誘惑蒔き/Sower of Temptation》
《崇敬の壁/Wall of Reverence》

 の2枚を選択。《復讐の亜神》のコントロールを奪った上、5点のライフを回復しターンを返す。

 しかし、ここで須藤の右手が鋭く光る。ライブラリトップからの須藤のトップデックはなんと《蔓延》。これにより墓地から蘇った真貝のクリーチャー達は再び墓地へと送られてしまい真貝のライフは23まで削られてしまう。だが、ここで真貝はようやく揃った7枚の土地から《軍部政変》をX=5でプレイ。再び盤面をひっくり返したことにより、二人の戦いはトップ勝負の様相を呈してきた。
 
 真貝が《軍部政変》した返しの須藤のトップデッキは《若き群れのドラゴン》!!さらに真貝のトップは《目覚ましヒバリ》想起!!それを須藤は《炎渦竜巻》・・・!!!が、真貝は2枚目の《崇敬の壁》で須藤の攻勢を食い止める!!

 あまりに激しい盤面の応酬に、二人の戦いを見届けんと集まった観衆はどよめきを隠せない。二人の戦いはターンを返すごとに熱を帯びてゆく。

 しかし、激しい戦いにもいつしか終焉が訪れる。決定打を先んじて引き込んだのは、、、須藤。《野生語りのガラク》を力強くキャストすると、すかさずビーストトークンを量産。2体のドラゴンと3体のビーストの前に30以上ライフのあった真貝は、ライフを4まで追い詰めた須藤の前に、、、膝をついたのだった。

須藤 2 - 0 真貝

―――終始圧倒的な“引き”で真貝との戦いを制した須藤、見事日本選手権本選の権利を獲得した!!
おめでとう、須藤恵理香!!!


/////////////////////
 以上で日本選手権川崎予選カバレッジを終わります。ご協力下さったプレイヤー2名、予選会主催者である中嶋氏、そしてジャッジ各位に感謝致します。ありがとうございました。

【神奈川/東京エリア MTGトーナメント案内】
http://www.f2.dion.ne.jp/~nakajt08/
6/21 日本選手権予選 スタンダード 川崎 ※賞品64位まで
6/21 PWC午後の部   スタンダード 川崎 ※午後から
6/21 Limits’09予選 シールド   川崎 ※午後から
6/27 PWC-200th-   スタンダード 新宿 ※記念すべき200回
7/4  PWC-201st-   3人チームスタン 新宿
7/5  PWC-202nd-   スタンダード 東神奈川
7/11 M10プレリリース シールド   川崎
7/12 M10プレリリース シールド   川崎
7/19 GPT新潟     シールド   東神奈川
7/20 PWC-203rd-   スタンダード 東神奈川
7/20 M10発売記念パ  シールド   東神奈川
8/1  GPT新潟     シールド   東神奈川
8/2  イベント未定
8/8  PWC-204th-   スタンダード 新宿
8/9  イベント未定
8/15 Magic Game Day スタンダード 川崎
8/15 Limits’09予選 シールド   川崎
8/16 イベント未定
8/22 PTQオースティン スタンダード 東神奈川
8/29 PWC-205th-   スタンダード 東神奈川
8/30 PWC-206th-   スタンダード 東神奈川
9/5  イベント未定
9/6  イベント未定
9/12 PWC-207th-   スタンダード 新宿
9/13 PTQオースティン スタンダード 川崎
※あくまで簡易表であることをご了承ください。詳細はTopページへ。
※未定部分は行われない場合があります。
※イベント内容は変更となる場合があります。

コメント

メノエ
2009年6月23日1:58

涙出てきた。

ラッチ
2009年6月23日2:08

なんという熱い戦い・・・・
そして熱いカバレッジ。面白かったです。

風法師
2009年6月23日2:44

その場にはいなかったけどドラマが頭の中でオート再生されました

sugi@静岡産
2009年6月23日2:53

全米が泣いた!!

白熱の戦いとはまさにこんな感じなんですね

nophoto
らっしゅ
2009年6月23日3:36

面白かったです。

nophoto
ばね。
2009年6月23日6:31

イカス、カバレッジをありがとう!

おくたん
2009年6月23日9:36

カバレッジ書かれたの初めてだから嬉しいッスw
ありがとうございます!

マンダム/闇の腹心
2009年6月23日10:23

なんかすごいな^^

MTGしたくなってくるwww

面白かったよ♪お疲れ様です。

スカルクランプ
2009年6月23日11:30

おお、なんか物凄く熱い文章で臨場感がありますね
ちょっと感動しました

ありがとうございます!

たべっち
2009年6月23日15:27

なにこれ熱い!
素晴らしく熱いカバレッジでした!面白かったです><

Hanoi
2009年6月23日19:22

>メノエさん

泣くなって~ww

>ラッチさん

すぐ横で観てたわけですが、2本目はヤバかったですね。《軍部政変/Martial Coup》の返しの《若き群れのドラゴン/Broodmate Dragon》にはみんな絶句してました。

>風法師さん

そんな風に言って頂けるととても嬉しいです。ありがとうございます。二人とも良く知っているプレイヤーだったので僕も気合が入りました。

>sugiさん

欧米かwww
かかってるものがハンパないですからね、、、二人の気持ちがテーブルの横まで伝わってきてました。

>らっしゅ

ありがとう。ファイナルズでカワサキさんに色々教えて貰った成果が出せてると良いんだけど。

>ばねさん

ありがとうございます!今度会場でお会いした時には詳しい感想でも聞かせて下さいな。

>すーさん

どういたしまして。俺も初めてカバレッジとられたときは嬉しかったから気持ち解るよww。喜んでもらえて嬉しいです。本戦頑張って下さい。

>マンダムさん

なんか凄いですよねww僕もMTGしたいです><。
ありがとうございます!昨日は寝たのが02:00だったから今日は眠かった・・・orz

>スカルクランプさん

どういたしまして!!試合中の熱気には及びませんが、、、それが少しでも伝わったのなら、とても嬉しいです。

>たべっち

ありがとう、嬉しい!
たべっちも本戦頑張ってね。東京から応援してるよ!

nophoto
みやけん
2009年6月23日20:41

たいへん熱い展開でおもしろかった。
具体的に言うと、ジャンプで半年くらいかけて描くレベル。
実際にゲームしてた二人も見てたギャラリーも手に汗握ってたろうなあと思った。

これからも、いい記事を期待してます!

Hanoi
2009年6月23日22:04

>みやけんさん

ありがとうございます。ジャンプで半年、、、単行本2巻分!?
静かだけれども 徐々に熱を帯びていくようでした。

また機会があればやりたいですね、お楽しみに(笑)!

nophoto
ねらー
2009年6月24日19:51

記念まきこ

れっづ
2009年6月24日22:01

カバレッジマニアが来ましたよ。
面白かったです。

Hanoi
2009年6月25日0:32

>れっづさん

ありがとうございます。もうすぐリミテッドシーズン始まりますね。また会場でお会いしましょう~。

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